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2018年05月02日

【コラム】<TAG>通信第19回「ストーリーにおけるテーマとは(略)(ゲストどうまえなおこ氏)」要約と所感 清水雅人


1時間超の映像を見る時間を割くのが難しい方のために、<TAG>通信[映像版]の要約をお送りするシリーズ、今回は劇作家、演出家のどうまえなおこ氏に話を聞いた。
※すべてを要約できてはないので、よろしければどうぞ映像版をご覧ください。
<TAG>通信[映像版] → https://youtu.be/JzlsYSjigcA

どうまえなおこ氏経歴
 今回のゲストは豊田を中心に活動する劇作家、演出家のどうまえなおこ氏をお招きした。これまでのゲストと同じく経歴や活動歴もお聞きしたいが、どうまえさんは、ホストの2人とは昨年秋以降深い関わりがあったので(石黒氏とは豊田市民の誓い40周年記念感動の玉手箱劇場事業の作演出チームとして、清水とは豊田ご当地アイドルStar☆Tアルバム「メロウ」収録短編小説執筆、作詞として)、そのことも話したい。
 どうまえ氏は2010年とよた演劇アカデミーの3期生に参加。それ以前には、映画や本を読むのは好きだったが、特に演劇などに関わることはなかった。学生時代演劇部でもなかった。その頃ちょうど人生のひきこもり期で(笑)、「これはいかん、外に出なければ」と思っていた時に広報とよたで演劇アカデミー生募集記事を見て、受講料も1年間で1万円と安いし(笑)、ちょっとやってみようかと思って参加したとのこと。「それでアカデミーに入ってみたら、ハマっちゃったんですよね~(笑)」と語る。演劇アカデミーの修了公演の脚本をアカデミー生みんなで書いたのだが、最終的に3幕を書く3人の内の1人に採用されてうれしかったし楽しかったとのこと。石黒氏もその時からよく書けてた印象がある、台本としてもきちんとしてて経験者だとばかり思っていたとのこと。

 演劇アカデミーは1年で修了だが、その後、長久手文化の家の戯曲講座に採用されて参加したりとか、ちょうどT-1(とよた演劇バトル 複数劇団・グループが短編演劇を公演し、観客投票でグランプリを決めるイベント)が始まって、劇団SUN(演劇アカデミー3期生を母体とした劇団)として参加したり、美術館のミュージアムフェスタ内での「小さな演劇」を手掛けたり(4作品ほど)、とよた演劇祭参加作品など、短編が主だが作演出を行ってきた。
 石黒氏は、どうまえのホンはいい意味でわかりにくいというか、すべてをセリフにしないので、より演劇的なホンが書ける人だと思う、自分はつい全部書き込んでしまうテレビドラマの人なので(笑)と語る。だから演出も合わせてやると、より良さが発揮できるタイプだと思うとのこと。ただ短編が中心で長編をやってないので、ぜひそろそろ長編にも挑戦してほしいとも語った。

豊田市民の誓い40周年記念事業 感動の玉手箱劇場「虹かかる街」について
 当事業のいきさつを石黒氏に聞く。市より、感動の玉手箱(市民から募集した本当にあったちょっといい話集)を題材に演劇公演をやってもらえないかというオファーがあったのがはじまり。最初は朗読劇でもと考えていたが、ちょうどとよた演劇協会も立ち上がったところで、ホンが書ける人材も揃っていたので、どうまえ氏を含む演劇アカデミー修了生からの7人で分担して台本を書き、演出もすることにしたとのこと。
 当初は感動の玉手箱の中の題材からと考えていたが、現実問題として、脚色するにも当事者の許可がいる、再取材が必要などのハードルがあったため、一旦白紙に戻し、7人で豊田の魅力とは?から話し合って、ワークショップ形式で小箱(※ストーリー上の構成)まで一緒に作っていった。
 筆者の観劇の感想は、石黒氏が実際に書いているパートは少なく、全体を調整するプロデュースをされたと思うが、逆に石黒らしさが出てるな、と感じた。例えば石黒氏が1人で脚本を書く場合よりも、プロデュースがゆえにより石黒らしさが出たのではないかと。それはプロデュースだからこそ、テーマやコンセプト、フォーマットを7人に提示調整する中で、より色がわかりやすくなったのではないかと思う。
 石黒氏は、演劇アカデミーの修了公演も、アカデミー生が書いたものを監修する形でやっていて、今回も流れは同じだったかなと、そういう意味では、とよた演劇アカデミーの集大成的な感覚もあったと語る。それに、今回は、“いい話を”というクライアントからのオファーもあり、7人にもコンセプトとして、“いい話で”というのは言っていたので、まとまりやすかったし、それほどもめることもなかったとのこと。
 小箱の段階で18シーンになったため、そこから1人3シーン程度ずつ台本を書き、演出も自分の書いたパートを中心としつつ、7人で演出する形だったとのこと。どうまえ氏は、中でも中心的な食卓のシーンを分担した。全体のコンセプトとして、「寺内貫太郎一家」(テレビドラマ)的な、昭和の家族的な雰囲気を出したい、家族の食事のシーンを中心に据えたいと思い、そこをどうまえ氏が担当したとのこと。
 どうまえ氏は、今ちょうど、何を書いたらいいのか、どう書いたらいいのか、という壁にぶちあたっていると言うが、このホンは、7人で一緒に作っていく中で、みんなからいろいろアイディアももらったため、すんなりとあまり壁を感じずに書けたと語る。向田邦子さん(寺内貫太郎一家脚本)の脚本を図書館で読んだり、映像も見たりして参考にしたとのこと。

 9月頃からストーリー作り、脚本作りをはじめ、11月までにおおよその完成形が出来上がった。出演者は市民公募で行った。12月のオーディション時に20名程度が集まり、その後演劇アカデミー修了生や経験者、たまたま稽古を見に来てた人を引っ張り込んでなどで、40名ほどになった。稽古は12月中は本読み等、1月から週2日のペースで行った。当初の予定より公演時間が伸びたこともあり、稽古時間はとても少なかったが、なんとか上演に耐えうるものができたかなと思うとのこと。
 どうまえ氏も、本番がとってもよかったので、ホッとしていると語る。見た人もよかったと言ってくれて、満足されているようなのでそういう意味でもよかったと思う。
 石黒氏は、今回は市民劇の良さが出たと思っていると語る。市民みんなで、子供からお年寄りまで幅広い年齢層が演劇に参加する感じや、観客が「知っている人が出てる!」となる感じも含めて、市民劇もいいなと。とよた市民劇や野外劇をやって、もう市民劇はいいな、と思っていたが、今回の事業を通して、市民劇という形もアリだなと再認識したとのこと。
 筆者も、観劇して同じことを感じた。市民が演劇に参加する機会として、こういう事業が、毎年は難しいかもしれないが数年ごとでもいいので定期的にあってもいいかなと思う。90年代に行われた市民劇は、豊田の演劇がほぼそれしかない状態だったのでクオリティも求められてしまったが、現在は、演劇アカデミー修了生の劇団はじめ様々な演劇環境もあるため、入口としてあってもいいなと思った。客席も満席で、出演者の家族や関係者も多かったと思うが、そういう市民劇的な雰囲気も1つの形としてよかったし、継続してあるといいなと思う。

Star☆Tアルバム「メロウ」について
 続いて、Star☆Tアルバム「メロウ」についてに移った。アルバム「メロウ」はコンセプトアルバムと銘打ち、収録の全14曲で1つのストーリーになっている。歌詞等でストーリーが繋がっていくのだが、軸となる短編小説を作り、CDのブックレットに収録するということで、その小説執筆を筆者よりどうまえ氏に依頼したという経緯。
 筆者とどうまえ氏との最初の打ち合わせの中で、アイドルがどうしてもテーマにならざるを得ないかな、とか童話的な内容はどうか等の話も出て、どうまえ氏はアイドル本を読んで勉強したりして(どうまえ氏が結構勉強する作家であることが判明した)、人魚姫をモチーフにする案はどうまえ氏から提案された。どうまえ氏が以前に作詞した「ハイブリッドガールⅡ」の世界観を継承したセカイ系ストーリーのアイディアもあったが、今回は継続性ではなく独立した形がいいとの判断で人魚姫モチーフが採用された。
 どうまえ氏は、当初長さの制約はないと聞いていたが、最終的に10ページほど削る必要が出てきて大変だったと語る。確かに当初は長さの制約をしてなかったが、上がってきた原稿が想定以上に長かったので、物理的な収録ブックレットのページ数の上限から、削ってもらったので申し訳なかった(清水)。
 石黒氏は、冒頭童話的な書き出しだったが、途中から小説的な文体に変化したりして、好みとしては最後まで童話的な文体の方がよかったのではと語る。
 どうまえ氏は、当初より、童話的な文体や小説的な文体、モノローグなどいろんな要素を詰め込みたいという意図があったとのこと。ただ、確かに文体をかき分けるには字数が少なかったのではとの意見も出た。散文執筆は初めてだったというどうまえ氏だが、書き進めて方については、途中にこういうシーンを入れる、ラストはこういう感じでという大まかな構想は持ちつつ、まずは書き進めて行ったとのこと。石黒氏は、短編ではなく、長編的な書き進め方をしたように見えると話した。
今回、石黒氏にも1曲作詞を担当してもらっている。主人公の人魚姫が人間になるためにはどうしたらいいかを聞きに魔女に会いに行くシーンをモチーフに作詞してもらっているが、魔女は、人魚姫を応援しているのか、諫めているのか、どちらの解釈か迷ったと語る。魔女は、以前人間と恋に落ちた過去があり、そのことで痛い目にあっている、しかし、それでも人魚姫を応援しているという解釈で作詞を進めたとのこと。
 筆者は、初稿を読んだ時に、「ピノキオ」やスピルバーグ監督の「AI」という映画を思い浮かべた。愛を持ってない人魚が愛を持っている人間界に行くが、もはや人間は愛を忘れつつある。その中では純粋に1人の男性にもう一度だけ会いたいと願い行動する人魚姫がもっとも愛を持っているように見え、それに触れた人間たちが逆に愛を取り戻していく、という普遍性のあるこれまでにも様々なところで繰り返されてきたテーマを感じたので、どうまえ氏と共有しながら2稿3稿と書き進めてもらった。
 石黒氏は、例えば魔女が以前恋をした人間が出てきて、、、というような展開もあったのではと指摘する。どうまえ氏は、途中片目のない男が出てくるが、あの男が人間の「悪」の部分をもっと体現していく構想もあった。だが、字数の関係で現在の形に落ち着いてしまった経緯もあると打ち明けた。
 筆者もプロデュ―サ―としての葛藤はあった。初稿を読んでとても面白いと感じ、この線で行きましょうとなったが、先ほど言った愛のテーマをもっとわかりやすく際立たせていくのか、例えば人魚姫がやってきた人間界はもう愛がない、愛の悪い面が出ているとするなら、人魚姫を助けるオタクや、プロダクションのマネージャーはもっと悪い人というキャラクターにするべきか、ただ、オタクの心情やアイドル業界の在り方がとてもリアルでフラットに書かれているので、リアルなアイドル業界の紹介という意味では今のままの方がいいのか、等々迷った。どうまえ氏は、そういう人間のダークサイドを片目のない男が表すという構想だったんだと思うが、最終的には字数や時間の関係で今の形で行きましょうと判断させてもらった。
 そもそもどうまえ氏は、舞台シナリオについても、台本を書く段階からゴリゴリにテーマを設定して書くタイプではなく、演出をしながら、徐々にテーマが後から見えてくるタイプなのではないかと筆者は思う。
石黒氏は、どうまえ氏はもちろん書いている段階からテーマはあるのだろうが、無意識で書いていて、それが後から見えてくるのではないか、でもそういう才能がどうまえ氏にはあると感じると語る。
 筆者は、テーマを固めてからストーリーを作っていくと、ストーリーの幅を狭めてしまう可能性があり本当はよくないのだが、映画作りで若い監督のシナリオを読んだ時に、テーマがわかりにくいので、もっとわかりやすくテーマを出したらどうかというアドバイスをいつもしてきた。あまりにもテーマが読み取れないのも作品としてのバランスを欠くのではと思う。
 特に今回は、メインのターゲットは普段それほど小説等に親しんでない層を想定していたし、まず最初の読者はStar☆Tのメンバーなので、いわゆる女子中高生の「泣けた!」というリアクションが欲しいですね、という話はどうまえ氏ともしていたが、そういうわかりやすさは出し切れてないかもしれない。理解力、読解力のレベルが落ちてきている、と言われている現在の中で、どのように創作していくかも考える必要性も感じた。
 ただ、今回は、コンセプトアルバムというフォーマットで、楽曲と連動した小説でもあるので、楽曲の歌詞によりテーマを分担させるという判断もあったことも添えておく。
楽曲と小説が絡む大きなプロジェクトとして完成した「メロウ」をいつか舞台化したいですね、という話が出たところで今回の対談は終わった。

最後に
 今回は、ゲストのどうまえ氏が関わった舞台作品と小説について中心に話が進んだが、感動の玉手箱劇場については、市民劇、脚本演出をチームで行うというフォーマット、みんなで作り上げていく過程ゆえに、よりわかりやすくテーマが見えたという印象と、小説という究極の個人的な創作の中でテーマをどう表現していくかのバランスの難しさが浮かび上がったと思う。演劇や音楽、映像やアートなどの創作の中で、テーマをどう扱うかということ自体がとても普遍的なテーマだと思うので、これからも折に触れ色んな人に話を聞きたいと思った今回だった。

 どうまえ氏は、現在具体的に告知できる次回作はないが、いくつか話はあるので、いずれお知らせできると思うとのこと。
 発起人2人が才能を認めるどうまえ氏の今後の活動にも注目されたい。

ゲストプロフィール
どうまえなおこ
劇作家、演出家。2010年とよた演劇アカデミー3期生に参加。修了後、とよた演劇バトルT-1、豊田市美術館ミュージアムフェスタ小さな演劇、とよた演劇祭など多数の劇作、演出を手掛ける。また、豊田ご当地アイドルStar☆Tの楽曲作詞歴あり。昨年秋からは、石黒がプロデュースした豊田市民の誓い40周年記念感動の玉手箱劇場の作演出チームに参加、また、清水がプロデュースしたStar☆Tアルバム「メロウ」収録の短編小説及び作詞に参加した。



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