› <TAG>Toyota Art Gene › 2013年12月03日

2013年12月03日

【コラム】30年間遊び続ける高校2年生 岩松あきら

映画コラム
30年間遊び続ける高校2年生   
岩松あきら

 ことの始まりは、高校2年生の夏。とてつもなくつまらない自主映画をつくりあげてしまったことがすべて。片思いのクラスメイトをヒロインに据え、その他のキャスト・スタッフを親友たちで固めました。編集機がないのでカット順に撮影し、移動撮影のために農家にリヤカーを借りる。アフレコができないからカメラの傍らでラジカセを抱えながら撮影する…。ヘタクソながらも、それはそれは楽しい映画づくりの日々でした。

 それから、27年後の夏。高2の時と同じように、この三河で、私は自分たちのつくりたい映画を必死でつくっていました。それが、三河映画第一弾の「幸福な結末」です。

 高2の時、クラスメイトに映画を褒められたいと思っていたように、日本全国、世界へ発信できるクオリティをめざしました。しかし、私たちにはお金がありません。もちろん、映画製作のプロもいません。周囲に協力を求めると、こんなことをよく言われたものです。

 お金はどれだけ出るの?
 劇場で公開される保証はあるの?
 協力すると、何かメリットはあるの?

 そんな時、私はいつもこう思ってました。潤沢な制作費があり、劇場で公開される保証があり、世界の映画祭で上映される保証がある。そんな映画がこの三河で製作されることが今まであったのかと。そして、これからもそんなことがあるのだろうかと。そんな企画がどこにあるんだと。

 みんな、ありもしない〝それ〟を待っている。〝誰か〟がやるのを待っている。仲間が見つからない。プロのつてがない。時間がない。お金がない…。そうやって、自分が行動を起こさなくていい理由を並べて、待ち続けている…。

 マハトマ・ガンジーの言葉で、私が好きな言葉があります。
―あなたがこの世界で見たいと願う変化にあなた自身がなりなさい―

 私たちは、「幸福な結末」で、この言葉を実行に移しました。全国オーディションを豊田で行い、総勢600人以上の役者さんと出会い、撮影は合宿体制。スタッフ・キャスト全員ボランティアで参加。完全自主製作体制でつくりあげました。

 それから3年後の今。私たちは「Ben-Joe」という三河映画で、再びガンジーの言葉を実行しています。相変わらず、お金もつてもありません。あるのは、「とてつもなく面白い映画が完成した」というビジョンです。

 私にとって、三河映画とは、このビジョンに向かって、再び高2の夏を過ごすことにほかなりません。つまり、誤解を恐れずに言うならば、三河映画は、ワクワクドキドキする時間を過ごすための「遊び」なのです。そして、私たちのこの「遊び」が誰かの役に立てたなら、こんなに幸せなことはない。そう思っているのです。


岩松あきら いわまつ・あきら
映画監督。高校時代より自主映画を撮り始め、これまでに国内外の様々な映画賞を受賞。2011年初の長編「幸福な結末」を三河映画として製作。  

Posted by <TAG>事務局 at 22:00Comments(0)コラム