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2013年12月01日

【コラム】短編映画企画「さゆみ企画」の心地よい軽さ <TAG>事務局

特集レポート
短編映画企画「さゆみ企画」の心地よい軽さ
<TAG>事務局

 映像制作のデジタル化が進み、誰でも手軽に映画が作れるようになって久しい。具体的に言えば、PCハードディスクの廉価化、映像編集ソフト普及等が始まったのは、2000年代当初なので、10年余りが経過している。さらに、その間も技術はどんどん進歩し、ハンディカメラでもハイビジョン撮影は当たり前、携帯電話カメラでの撮影でも、かなりの解像度の映像が撮れるようになっている。

 それなら、自主映画制作人口――いわゆるアマチュア映画制作者の数も順調に増えてきたかと言えば、実はそうでもない。2000年代当初には、映画コンペ応募数が増大し、日本各地で自主映画や短編映画を上映する映画祭が多く誕生したが、数年で応募数は頭打ちになり、有名な映画祭以外は淘汰されて姿を消した。事実、映画祭だけでなく、自主映画・短編映画の上映会も、名古屋でも決して多くない。

 その原因の分析は、スペースの都合でここではしないが、そんな中、豊田でふっと4本の短編映画が制作され、その上映会が開催される。「さゆみ企画」という怪しげな名のこの企画は、まさしく〝ふっと〟作り手が集まり、〝ふっと〟映画を作ってしまったという印象だ。

 ことの発端は、昨年度、豊田市駅前のヴィッツの地下にある豊田市民ギャラリーを活用した、演劇・映像・音楽の融合イベント〈TUG〉において(〈TUG〉は当誌を作っている〈TAG〉の発端でもある)、演劇参加した役者加東サユミの「何か面白いことをしたい」という発言に、地元で活動している映像制作者や演劇関係者がノったところから始まる。

 だが、ことは壮大なプロジェクトと化したわけではない。数名がサイゼリヤでお茶を飲みながら何回かの打ち合わせで企画を持ち寄り、シナリオを検討して、8月~9月に各作品1~2日で撮影をしてしまっただけである。

 この〝ふっと〟映画を作ってしまったという軽さには、実は、豊田において、ジャンルを超えた人材のネットワークができつつあるという下地がある。例えば、長年豊田の演劇界を牽引してきた石黒秀和氏は、もともとは映像シナリオを志した経緯があるが、実は今回が映像初監督作になる。堂前奈緒子氏も古場ペンチ氏も豊田演劇の若手のホープだが、映画の監督は初挑戦だ。ここでは、映画制作団体M.I.F.(ミフ)のメンバーのサポートがスムーズに入ったことも大きい。

 さらに、豊田市駅周辺の商店街での撮影もスムーズに行われ、上映会も商店街の中にあるお寺で行うなど、これらも、これまでの商店街との繋がりが下地にあるのは確かだ。

 昨今では珍しいとさえ言える自主映画・短編映画上映会が〝ふっと〟豊田で開催されることに、大いに期待したい。


さゆみ企画上映会「Toyota(豊田)Temple(お寺)Tanpen(短編)Theater(映画館)」の開催概要、上映作品は、こちらをご覧下さい。

 

  

Posted by <TAG>事務局 at 12:00Comments(0)コラム