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2013年12月04日

【コラム】一度はまると癖になるかほり 古場ペンチ

演劇コラム
一度はまると癖になるかほり   
古場ペンチ

◆古場ペンチです。演劇が好きです。
 初めまして。僕、4年ほど前から豊田市を中心に演劇活動を続けております。福岡での学生時代に演劇を始め、以来、足を洗うことができずに十数年経ちました。恐らくこれからも足を洗うことはないのでしょう。つまり、足は臭くなる一方ですね。でも、いいんです。何故なら、僕は演劇が好きだから。今回は僕の大好きな演劇について書かせて頂きます。

◆美術館で演劇。面白くなってきた豊田演劇。
 豊田市美術館では今、『反重力展』が開催されているのをご存知ですか。12月24日まで行われていますが、去る10月12日、その反重力にちなんだ演劇公演が行われました。『前進する光。とどまる時間。』上演時間約30分の1回きり、舞台は美術館のホワイエという小ぢんまりとしたその演劇は、大変素晴らしいものでした。僕はこの公演で、豊田演劇がまた一歩面白くなった、そんな足音を聞くことができた気がします。

◆魅せる演出で作品に引き込む。
 《道路建設のために解体された家の跡地。そこに住んでいた姉妹によって語られる家と家族の物語。》この公演の良さを一言で表すならば、「演出が生きていた」ということです。作・演出は堂前奈緒子さん。作品作りの際、客観的な視点と美的センスの判断だけでなく、そこに方法論が存在していました。例えば、舞台セットが抽象的であることに意味を持たせてある。地面に家の間取り線、人がチョコンと座れる小さな箱が3つ、家に染み付いた匂いのようなものを縁取った写真が散らばっている…それだけの空間。俳優が間取りに忠実に動けばまだ家が存在しているように見え、間取りに関係なく動けば、かつてそこに家があった記憶の話をしているように見える。家の解体をキッカケに家を嫌っていた姉の気持ちが揺らぐ様子が描かれたとき、観客は「あぁ…本当に家は解体されて平らになったんだな」と実際に平らな舞台を見ながら妙に姉に共感し、グッとその世界に引き込まれる訳です。演出家が作品を魅せるための仕掛けを作り、それを理論的に構築する。当たり前のことではありますが、こと豊田演劇においてこれができる演出家は数少ないのが現状だと思います。

◆閉じていたものを開いて新たな繋がりへ。
 美術館のホワイエという開けた空間で公演を行ったことで、これまで演劇に関わることのなかった別のアートな人と繋がりが生まれれば嬉しいですね。座席数約30に対し観劇者は100人超えとのこと。「美術館に来たらなんか演劇やってた」という感じでうっかり覗いて、うっかり演劇にはまり、うっかり足が臭くなる人が増えればいいのになぁなんて思ってます。


古場ペンチ こば・ぺんち
役者・演出家。個人ユニット『Pinchi』にて活動中。福岡で学生時代から演劇をはじめ、来豊後も様々な舞台に出演。また、作・演出も手掛ける。  

Posted by <TAG>事務局 at 21:00Comments(0)コラム